第282章

「南、家まで送らせてくれないか?」

 前田南は望月琛を一瞥すると、相変わらず冷ややかな表情で首を横に振った。

「結構です」

 自身の言葉が少し冷たすぎたと感じたのか、彼女はさらに言葉を継ぎ足す。

「今日はククの誕生日に付き合ってくれてありがとう。でも、タクシーで帰れるから大丈夫」

「もう遅い時間だ。女二人でタクシーに乗るのは危ない。俺に送らせてくれ」

 前田南の拒絶に、望月琛は苦笑を漏らした。「安心してくれ。ただ家まで送り届けたいだけだ。……決して、君が嫌がるような真似はしない」

 彼の言葉を聞き、確かにこの辺りではタクシーが捕まりにくいと考え直した前田南は、妙な意地を張るのを...

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